集結は、まだ先

2026/09/15公開



力のある者たちの中に、いささか浮いた種族が集まっていた。
魔力に長けたタルタル族。
見下ろす長身の種族に物怖じせず、意見する。

「本当に、西の陣営への派遣はいらないのですか?」

見下ろすエルヴァーンの騎士達。
一人が、確認するように他の仲間の顔を見回す。
タルタル族の傍らで、ヒュームやガルカの集団も難しい顔をして立っていた。

束の間の沈黙の後、一番端にいた騎士が動いた。
何かを思い出したように指を鳴らし、小さく笑う。

「西には今、あれがいる」

彼に視線を集め、その場にいる者たちは眉をしかめる。

エルヴァーン族だけが、閃く。
視線を交わし共有される、呆れのような空気。
真ん中の騎士が、タルタル達に視線を戻す。

「西の戦力は問題ない」

苦いものを滲ませた嘲笑。

「耳は持たぬが、負けはしないだろう」

訝しむ異種族たちは顔を見合わせる。
騎士だけが何かを共有し、含んだ笑いを噛み締めていた。

代表して意見したタルタルの魔道士が、何かを悟ったように溜め息をつく。

言うことを聞かない者は、どこにでもいるのだな。

そんな顔。


議論の場は、ぼろぼろと崩れるように解散となった。
背の高い騎士達と、小さな魔道士たちに背を向け、マキューシオも自陣の詰め所に戻る。


すれ違いざま、土砂を運ぶ台車の車輪が壊れて大きく傾いた。
咄嗟に、そばにいた二人のガルカとともに支える。

台車を押していた者が車輪の前に屈んで頭を掻く。

「同郷なんだぞ、俺達」

唐突に、髭を生やしたガルカが声をかけてきた。
不安定にぐらつく台車を支えつつ、横目に見る。
行動をともにしている姿をよく見かける、ガルカの二人組だった。

「俺達の親父みたいな男が、鉱山で一緒だったんだ」

「お前の親父さんとな」

白いたてがみの、身体の大きい方が付け加える。
無骨なガタイだが、見つめてくる瞳には穏やかさがあった。

「お前さん達姉弟とも、よく遊んだろ?」

投げかけられ——手が、わずかに止まる。
すぐに、何事もなかったかのように台車の修理を見つめる。

乱暴に叩き、車輪が直る。
礼を言って過ぎ去っていく台車。

少しの間が落ちる。
何かを察したように、髭面のガルカが息を吸い込む。

「昨日はありがとな。危うく孤立するところだった」

手についた土を叩きながら笑った。
その相棒が、上からじっと見つめてくる。

「……昔の面影がそのままだな。お前さん、成人はしてるだろう?」

大きいガルカが腰に手を当てると、備えた格闘武器が鳴る。


自陣の方向から二人の戦士が駆け寄ってきた。

「斥候ですか?」

問われたブラウンの瞳が彼らを真っ直ぐに見つめる。
無言のまま頷きを返した。
戦士二人は装備を鳴らし、すぐに引き返していく。
揃って見送っていると、誰かが叫ぶ。

「東へ向かう! 班長は詰め所に集まれ!」

周りが重い腰を上げ、出陣の準備にかかる。


「これも何かの縁だ」

髭を撫でて、ガルカがにっと笑う。

「よろしくな! 兄弟」

肩に腕を乗せられた大きな相棒も、唇に笑みを浮かべてヒュームの剣士を見下ろす。

先程の戦士の一人が『隊長』とこちらを呼ぶ。


ようやく、口を開く。

「……これでも私は、二十六だ」

ガルカ達が目を丸くする。

「おっと」

白いたてがみが揺れ、次の瞬間、豪快に笑った。



<End>

あとがき

二軍スピンオフ『集結は、まだ先』でした。