我侭になれない

第三章 第九話
2006/04/12公開



長い長い一夜が明け、ダンはまだ少し早い時間に自分のレンタルハウスを出た。
狩りに行くわけではないので鎧など装備せずとも良いのだが、それなりに整えた装備で微かな金属音を鳴らしながら冒険者居住区の通路を歩く。
さすがに盾まで備えてはいないが、腰にはよく鍛錬された片手剣を下げている。
予定では、当分の間両手剣を背負うことはない。
両手剣の方が片手剣よりも当然威力はある、しかし今までのそのスタイルでは今後不釣合いだ。
何かを防ぎ、何かを護るためにはしっかりした盾と速さのある片手剣が必要になるからだ。
両手剣にもそろそろ飽きてきたと感じていたし、特に深い理由はない、と思っている。

朝日が照らし、町にじわりじわりと活動の気配が広がり始める時間。
ひんやりとした朝の空気に頬を撫でられるが、睡眠が足りないはずなのに欠伸一つ出ない。
頭はぼんやりとするどころか朝から妙に回転が良く、実際は疲れているであろう体をきびきびと働かせた。
次から次へと指示を飛ばす頭に突き動かされて進む足が向かっているのは、あのヒュームの娘のレンタルハウス。
訪問するにしては少し早いような微妙な時間だが、これ以上待つことはできなかった。
夜は明けた、それだけで充分だろう。
そんなことを思うと同時にダンは訪問先の住人、トミーはもう起きていると踏んでいた。
あれこれ考えて眠りに就けずに一夜を明かすか何かしているに違いない。
一応、昨日の事後、すぐに自分が片っ端から言ってやったので、そんなに自分を責めることはしていないと思うが。
昨日はロエやリオにトミーの面倒を任せたので、まだどちらかが部屋にいる可能性もある。
が、多分いない。
トミーはきっと自分を反省させるために、自分のことを弁解してくれる人間とは距離を置く。
まあ、猫は弁解などするとは到底思えないけれども…。

考えながら歩くこと数分、ダンの足は目的のレンタルハウスのドア前で止まった。
まだ低い朝日がドアを照らしており、冷たそうなドアノブを見ると何となくダンは朝日を振り返った。
昨日は色々と忙しくてあっという間に終わったが、昨日起きたことは事実。
事実であるが、その日は終わり今新しい一日が始まった。
朝日に目を細めながらふと、懐に入れてある魔法の真珠リンクパールを意識する。
昨日は自分の指示通り、あの後誰もリンクシェルで言葉を放つ者はいなかった。
もしかするとトミーがごちゃごちゃと謝罪を述べるかもしれないと思っていたがそれもなく、パリスもロエも昨晩はじっと沈黙を守った。
トミーに慰めや励ましを言うなと、放っておけと自分が言った以上ダンもリンクシェルを使うわけにはいかない。
まぁ、朝一でトミーの元を訪問しようとしている時点で、リンクシェルを使う以上の抜け駆け行為だとは分かっているのだが。

寝ていたら黙って帰ればいい、他に誰かがいてもそれは同じこと。

ダンは胸中そう独りごちて、朝日に照らされたドアを大人しくノックした。
ノックする瞬間、ドアの向こうで微かに声が聞こえたような気がして、ダンはノックした手をそのままピタリと止めて眉を寄せた。
誰か、いる?
「むぁっ」
ドアの向こうから今度はハッキリと間抜けな声が聞こえた、間違いなくトミーの声。
「あー……俺だ…が」
『誰か来てるならいい、また後で来る』と続けようと思ったが、朝にしては妙に張りのある声で呼ばれた。
入ってきてくれと呼ぶトミーのその声に疑問符を浮かべつつ、ダンは気まずい気分でゆっくりとドアノブを捻った。
ドアを開いて中を見ると、正面に見えるテーブルに座ったトミーがじっとダンの登場を待っていた。
その顔が、何だかよく分からないがやたらと嬉しそうな顔に見えた。
「おはようダンッ、ちょ、ちょっと待って」
そんなことを言ってトミーはテーブルに向き直って座り直した。
テーブルの上には何やらたくさんのものが広げられており、トミーの手元には一冊のノートが開かれている。
状況が分からないダンは後ろ手にドアを閉めて訝しげにトミーの様子を観察する。
テーブルの上にあるのはいくつかの装備品、アイテムと、自分達のものとは違う色のリンクパールが一つ。
ペンを片手に、広げたノートを凝視しているトミーの顔は申し訳なさそうな表情で、テーブルの上に転がっているあのリンクパールで会話しているのだとダンは察した。
「ありがとうございました、このお礼はいつか必ず!」
最後の言葉か、トミーはそんなことを言って背筋を伸ばすとペンを置いた。


「…ふー……はいっ、ごめんねダン!今片付けるからそこにでも座って!」

ゆっくりとテーブルへ歩み寄るダンを見上げてトミーは慌てたように言った。
怪訝な顔をしたダンがじっとトミーの手元を見下ろすと、トミーはハッとして広げたノートの上に身を乗り出して隠す。
「わぁぁぁダメダメッ!どうせ汚いから読めないよっ!」
トミーが慌てて隠す前に少しノートの内容が見えたダンは途端に半眼になった。
顔を真っ赤にしているトミーをそのままじっと見下ろして苦笑する。
「…………ほぅ」
「ななな、何だよぉー!またバカにするんでしょもぉー!」
キャンキャン吠える彼女をよそに、ダンは苦笑したまま椅子に腰掛けた。
こいつは本当に………こういうところがアレなんだ、まぁ、言わないが。
どうやらトミーは別のリンクシェルを使って“お勉強”をしていたようだ。
冒険者たるもの、二つや三つリンクパールを持っていてもそれが普通である。
パリスやロエ、他でもないダンも幾つかのリンクシェルには所属しているのだ。
無能とは言えトミーはこの性格である、他のリンクシェルから誘いを受けていてもおかしくはない。
何処で誘われたものかは知らないが、トミーはいつものとは異なるリンクシェルの者達に助言を求めていたようだった。
「パーティ行動の基本ルールんとこはちゃんと赤で書いたか?」
「む……書きましたよ、ちゃーんと◎とか付けちゃって!」
ムッとした顔をしてガサガサとテーブルの上を片付けるトミーにダンは溜め息をつく。
わざわざ別のリンクパールを引っ張り出して助言を求めた辺りが可愛くないと思ったが、昨日の出来事が出来事なのでまぁ仕方が無い。
ポイポイと装備品を片付けているトミーの手元から、ふと目に留まった一つのピアスを摘み上げる。
「ん、お前………こんなもん持ってたのか?」
手に取ったのはレベルの低い者でも着けられる、能力の高いピアス。
それなりの値打ちもするし、装備品に疎いトミーには似つかわしくないものだ。
「あーうーんとそれはね、お友達の人がくれたの。もう使わないからーって」
どことなくふて腐れたような声で答えるトミーをまじまじと見ていると、『返して』とトミーが手を差し出す。
トミーの掌にピアスを置くとさっさと彼女はそれをしまって、テーブルの上に広げていたもの全てを抱えると荷物をまとめて棚の一角に押し込んだ。
その後ろ姿を傍観して、ダンは一瞬迷ったものの口を開く。
「………お前さ……」
「ん?」
「………あんまりほいほい物もらうんじゃねぇぞ?」
苦笑の中から出されたその言葉に、トミーはぴくりと動きを止めてダンを振り返った。
訝しむその顔には『なんで?』と書いてある。
「見返りに何要求されるか分かんねぇだろうが」
ばつが悪そうな顔で言いながら、ダンは頬杖をついて明後日の方向に視線を流した。
『え』とトミーは戸惑いを露にする。
突然何を言い出すのかと驚いているのと、それに大して怒っていいのか分かりかねているようだ。
「な、に、何で?そんなこと言わないでよ」
テーブルまで戻ってきたトミーはしどろもどろに言った。
トミーだって、タダなら何でも貰っておこうという考えを持っているわけではない、決して。
ただやはりトミーのこの性格ゆえ、世話を焼きたいというか、気を利かせてくれる者はいるわけで。
トミーも当然遠慮はするし、あのピアスの件では遠慮し切れなかったというだけ。

それに何を隠そう、いつも一番早くトミーに必要な物に気がついてくれるのは……。

「別に、人を疑えって言ってるんじゃない。ただそういうことも有り得なくは無いって言うだけの話だ」
そこまで言うとダンは上目遣いにトミーを見上げた。
今こちらが自分のことを考えているとは思っていないであろう彼を見つめて、トミーは可笑しくなった。
笑みを浮かべたくなるのを堪えてダンに背中を向ける。
「………大丈夫、私の知り合いにはそんな人いないよ」
何だかんだで心配してくれているダンの気持ちを嬉しく思ったが、同時にふと、どこか寂しい気持ちが滲む。
思えば、彼には今までそれはそれはたくさんの力を貸してもらった。
昨晩も他のリンクシェルで勉強を試みたものの、やはりダンが相手の時ほど突っ込んだことは聞けなかったし、夜から朝にかけて主に活動している人々だと知っていてもどこか遠慮してしまった。
他の人とダンではこんなに違うのだと改めて実感したトミーは、自覚していた以上に、自分がダンにすっかり甘えてしまっていることを痛感した。
「ならいいけどな」
これ以上はもう言うまいと引き下がりの言葉を口にするダンに、トミーはやや視線を落としたまま「……うん…」と答える。
当然、その様子を彼が見逃すはずもない。
「?……何だ、眠くなってきたのか?お前少しは寝たのかよ?」
『ちょっと顔見せてみろ』と言うダンの声を背中に聞いて、トミーはハッと振り返った。
「寝た!寝たよ?」
ダンを振り返ったものの、近くには寄らずにその場で続けた。
「でも目が覚めちゃって……すぐ勉強しなきゃと思ってさ!」
笑って見せるが、怪訝な表情をしたダンの眼差しに見つめられ、全てを見透かされてしまうような気がした。

本当はほとんど寝ていない、また怖い夢を見て起きてしまったから。

でもそれをわざわざ言う必要はないよね?
もっと私のことを理解してもらって、ちょっぴり心配してもらえたらそれは嬉しいけど。


でも、でも、しょうがないじゃないか。



ダンは………私だけの……じゃ…ない…から…。



「ほんと、単純だなお前」
「…い~よい~よどうせ単純ですよ~私はぁぁ~」
膨れっ面をしてぷいとダンから顔を背けると、トミーはさっさとキッチンへ入っていった。
どこか投げやりに聞こえる『ダンは朝ご飯食べたのー?』というトミーの声。
ダンが茶を一杯飲んで出てきたと答えると、ではダンの分も何か作るという声が返ってきた。
調理器具を出したり食材を洗う水音などでキッチンが騒がしくなる。
当然のように始まった冒険者として普通ではない朝食の準備に、ダンはゆっくりと溜め息をついた。
合成ができないのだから自らの手で作るのは当たり前か。


――――――コンコンッ。

それなりに材料があるのなら自分が合成でぱぱっと作ってしまおうか。
と考えた丁度その時、ドアがノックされた。
「ん…おい、誰か来たぞ」
キッチンに向かって言うが、ばったんばったん賑やかにトミーが動き回っている音が聞こえるだけ。
水も使っているようだし聞こえていないのだろうか。
というか何か、『しょうがないよぉぉ~』とか独り言も言ってるっぽい。
自分の世界に入って料理をする習性なのかと眉を寄せていると、もう一度ドアがノックされた。
あまり待たせるのも悪い、それにもしかしたらロエかパリスかもしれない。
とにかく二人に共通した関係者の可能性が高いので、ダンは『出るか……』と腰を上げた。
ドアに歩み寄ってドアノブを掴んだところで三度目のノックがされ、ダンは『何か急ぎか?』と疑問に思いつつ相手が誰か予想しながらドアを開けた。



「あっ、おはよっすトミー姉ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ぁ同棲だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ドアが開くなりダンを見上げていきなり大絶叫したのは、魔道士らしきタルタルの少年。
ダンは直ちにその少年の口を塞ぐように顔を掴んで持ち上げると室内に放り投げた。
『あぶっ』と後頭部から墜落して床の上をのた打ち回る少年。
「誤解を招くようなことを大声でシャウトするんじゃねぇ!」
青筋を立てたダンはばんっと力いっぱいドアを閉めながら少年に怒鳴る。
「どぼじで!!どぼじでヴぁっは!!!」
「うるせぇ黙って喋れ!!」

「んな、何?何やって……の?!」
いきなり室内が騒がしくなったことに気がついてキッチンからトミーが飛び出してきた。
手にはリンゴとスポンジを握っておりスポンジからは水がばたばたと床に落ちている。
「チョモ君!どっから出たの!?え、いつからいたの!?」
「トミー姉ちゃブブブブブブッ!!」
「おい水が顔に直撃してんぞスポンジ置いてこい」
慌ててタルタルの少年チョモに駆け寄ったトミーはダンの一言で手に持ったスポンジの水がすごいポイントに落ちていることに気がつき『わっ、わっ』と大慌てでキッチンへと引き返していった。
そしてスポンジの代わりにタオルを掴んで戻ってくると、チョモの横に膝を着いて
『ごめんなさい!』とビショビショになったチョモの顔にリンゴをごりっと押し付ける。
「――――あれ!?私タオルは!?」
「取りに戻らんでいい逆の手に持ってんだろーがワザとかお前!!」
「あっホントだごごごごめんねチョモ君!は…はいっ、タオル、ごめんなさいっ」
「げほっ……ありがとうっす。……トミー姉ちゃんほんと面白いっすね……」
目に水が入ったしょぼしょぼの顔でチョモがタオルを受け取ると、トミーは顔を真っ赤にしてがっくりとその場に座り込んだ。



チョモが顔を綺麗に拭き終わると、トミーはタオルを片付けてもう一度謝った。
床を転げまわった体を叩きながらチョモは『大丈夫っすよ』と笑う。
そして椅子に腰掛けてトミーに対してぶつぶつと何か言っているダンをちらりと見ると、チョモは滅茶苦茶になったローブのフードを整えながらトミーを見上げる。
「ボクの方こそ、こんな時間にお邪魔しちゃって申し訳ないっす。話が済んだらすぐに帰るんで」
「え、話?せっかく来てくれたのにゆっくりしていけないの~??」
「うん、今日はこれからアズマさん達とちょっと用があるんす」
チョモはそう言いながらちらりとまたダンの様子を盗み見た。
その視線に気がついたダンが気だるそうにチョモの横顔をじっと見つめる。
ダンの視線を感じつつ、チョモは『えぇと』ともごもごしながらトミーに言った。

「えーーあのーーそのー…トミー姉ちゃん達、昨日はなんか大変だったみたいっすね?」
予期せぬその発言にダンはぴくりと表情を険しくし、トミーはハッと目を見張る。
二人のその反応にチョモはびくりと小さな体を跳ね上がらせた。
『な、え?何すか!?』等と言いつつ二人を見比べるこのタルタルはいちいちオーバーリアクションである。
「う…うん、確かに昨日はちょっとね……何で?」
椅子に腰掛けてチョモを見つめるダンにぴりりとしたものを感じ、トミーは誤魔化し笑いをしながら尋ねる。
チョモは一生懸命ダンのことを見ないようにしてトミーに苦笑を返した。
「昨日デルクフ近くでトレイン起こした奴いたでしょ?あれ、ボクの弟なんすよ」

「………へ?」



   *   *   *



昨晩デルクフでのことを弟の口から聞き、弟の情報からその時に加勢してくれた一行がトミー達だと分かった。
ダンのことは弟も知っていたし、トミーに関しては以前からチョモがちょくちょく兄弟間の会話に出していたから。
無鉄砲に突撃してきたヒュームの女戦士、苦笑しつつ場を収めて彼女を慌てて追いかける長身のエルヴァーン、彼らの後を追うダンとタルタル魔道士とミスラのモンクの3人。
これらの弟の証言を聞き確信したのだが、『突撃してきたヒュームの女戦士』の時点で、もしやと思ったという。
その一行がトミーらだとチョモが言うと、弟は何かお礼がしたいと言い出した。
あの時の加勢で色々と救われたし、前からトミーには会ってみたいと思っていたと。
しかし本日、弟はリンクシェルの仲間達と北へ長期の遠征に出る予定らしい。
こちらを発つ前にどうしても挨拶はしておきたいのだと弟は言い張り、今日の昼前にチョコボでバタリアを通るのでその時に礼を言いたいと。

『ワガママな弟で悪いんすけど………』


「まったくだ馬鹿野郎」

トミーと並んでジュノ上層の通りを歩きながらダンが不機嫌な声で毒づいた。
口を開けて大きな時計塔を見上げていたトミーがダンに視線を戻す。
「そう言わないのー、忙しいんだからしょうがないでしょ」
あの後じっと待っていることができなかったダンが、あった食材を使いアップルパイを合成でさっさと作った。
彼の見事な合成調理の腕に驚嘆したトミーの言葉を浴びながら二人で朝食を取り、指定された合流場所へゆっくりとした足取りで二人は向かっていた。
「わざわざお礼とやらを言われるためにお前の方が出向くとはな、どれだけ有難い言葉が貰えるか楽しみだ」
あの規格外の声のでかさには何となく覚えがあったが、あのチビの身内だったか。
そんな顔をして悪態をついているダンをトミーは横目に見上げる。
「私だってチョモ君の弟君にはちゃんと会ってみたいし……昨日はあっちのパーティの人にも迷惑かけちゃったからいいの!いいよ別に、ダンは一緒に来てくれなくても?」
トミーを横目で見下ろし、ダンは声のトーンを下げて『そういうわけにもいかねぇ』と零した。
当然その発言をトミーは不思議がるが、ダンは彼女の方向音痴なところ等を取り上げて言い包める。
言い返せないトミーはムッとした顔をして口篭もると、通り過ぎてしまった時計塔を振り返った。

勿論そういった理由もあるが、今はそれだけではない。
例のエルヴァーンの男、クフィム島にいたということはこのジュノの町中を通ったということだ。
クフィム島へ入る通路はジュノ港の階段下にあるあの地下通路くらいしかないのだから。
彼の目的が本当にトミーなのだとしたら、この町中の雑踏に紛れていても何ら不思議ではない。
果たして昨日はあの後、ロエ達とどのように過ごしたのだろうか。
もしかするとリオがベラベラと余計なことを喋るのではないかとも懸念していたが、今朝のこの様子だと、トミーはまだデルクフの塔内であった出来事を知らないようだ。

何故あのような者が現れたのかを探るには、トミー本人に聞くのが一番の近道である。
しかしどのように話す?

「まったく……いっつもそうやってダンはすぐさぁ……」

話をどう切り出すかダンが思案していると、後ろで手を組んでぶらぶらと歩いているトミーがぶつくさ言った。
トミーは簡単に装備を整えた格好で出てきている。
彼女自身は楽な初期装備で出ようとしていたのだが、ダンが鎧を装備するよう指示したのだった。
少しとはいえ町から出るのだから……という部分だけで止めていれば素直に従いやすいのだが、ダンの言葉には『ただでさえお前はまだ未熟』がプラスされていた。
いちいち嫌味っぽいというか何というかである。
「………あ……あぁーーそうだ!」
文句を言っているトミーをほったらかしにしていると、彼女がいきなり思い出したような声を出した。
今度はなんだと視線を落とすと、半眼になったトミーがダンをじっと見上げている。
丁度ゲートをくぐりジュノ上層からバタリアへ出る橋に入った頃だった。



「……………何だ」
「……ちょっと怒ってるよ、私」
「は?」

まったく意味の分からないことを突然言い出したトミーはプイッとダンから顔を背けた。
ダンとしては、昨日の出来事についてトミーとどう話すかを真剣に考えたいところなのだが、いきなり『怒っている』と言われては心外で聞き流せない。
思い当たることがあり過ぎて、彼女を怒らせたからといって今更慌てることもないが。
「何だ、昨日俺がお前に言ったことに関しては謝るつもりないぞ」
思い当たる候補の中でも一番有力なのは、やはり昨日の説教である。
しかしトミーは、そうではないと言いた気な眼差しをキッと向けてきた。
「私は別に!……私が悪かったんだから………あれで怒ったりしないけど……」
睨むように向けられたトミーの視線を見返していると、トミーの目元が何処か疲れているような、まるで泣き腫らしたような風に見えてダンは眉を寄せた。
…………オイ、本当にただの寝不足か?
「ロエさんに何言ったの?」
「――――――――――んぁ?」
ふと今の話題とは別のことに思考を馳せていたダンは、予想の中になかった名前が出てきて目をしばたかせた。
まったく見当がつかないとでも言うように眉根を寄せるダンに対してトミーは歩く足を止めて言う。
「なんだかロエさん、傷付いてた。自分はダンに嫌われてるんだって。何したのか分かんないけど……ロエさんは私とは違うんだから気をつけてッ」
徐々に語気を強めたトミーはそこまで言い終わると、歩くことを再開してダンを追い越しずんずん進む。
置いてきぼりにされたダンはしばしぽかんと彼女の後ろ姿を見送った。

トミーはあの後も懸命にロエを励まそうと努めたが、結局ロエは俯いたまま『ごめんなさい』と口にして逃げるように帰っていってしまった。
ロエの気持ちに今までまったく気付かなかった申し訳なさと、これから自分はどうすればいいのか分からない困惑でトミーは彼女を引き止めることもできず。
昨夜はとにかく反省した、自分が勝手に良いと思っていた仲間達との馴れ合い方を。
これが自然なんだと思っていたが、ロエにとっては苦しいものだったに違いないのだから。

「オイ待て、何なんだいきなり……」

そう言ってダンがトミーの横に追いついてきたのは、古いゲートをくぐってバタリア丘陵に入った頃。
石造りのゲートをくぐるとその先には緑の草が茂る地面が広がっていた。
そしていくつもの小高い丘が広い青空の下に点在している。
相手はチョコボから降りずに済ますためトミーをバタリアまで呼んだのだ、ゲートを出たあたりで待っていれば良いだろう。
バタリアで注意しなければいけない黒虎等はゲート付近には姿を現さないので、時折ちらほらとうろついているゴブリンに気をつけていれば良い。
トミーは辺りを見回してまだ相手はきていないのだと分かると、溜め息をついて腕組みをする。
むすっとしているトミーの横顔を見つつ、ダンは『今が良い機会だ』とひらめいた。
「何だかよく分からんが………昨日はあの後どんな話したんだ?」
リオが余計なことを言っていないか、参考になるような話をロエにしていないか。
ダンがそれとなく探りを入れると、トミーは遠くを眺めながら相変わらずのしかめっ面で答える。
「別に。私が二人にごめんなさいって話しただけだよ」
「あ?じゃあなんでいきなりロエさんのそういう話になるんだよ」
もっともなその返しに対して『あぁそっか』とトミー自身間抜けに納得する。
「え~とまぁそういうこともロエさんがちょろっと言ってたのッ。自分も勝手なことしちゃったからきっとダンが呆れてるみたいなことをね?とにかくすんごい自分のこと責めてたんだから!後でちゃんと話しに行って?」

何だか面倒な流れになってきた、とダンは思ってしまった。

このままそれとなく探りを入れていきたいのだが、どうも昨日は自分の知らないところで何か厄介なことが起きたらしい。
単純に昨日の自分の行動を反省していてくれれば聞きやすかったのだ。
『お前は知らないところで敵を作ってるかもしれない』と言った流れで探ることができたのだから。
しかしどうも、これはおかしなことになってきた。

何があったんだ……本当に。

「あー………そういやロエさんとは話しておかなきゃなーとは思っていたが……」
「ダン、何を言うにも攻撃的なんだもん。だから人に怖がられたり嫌われちゃったりするんだよ」
足元を見下ろしてぶつぶつと言うトミーのその言葉に、ダンは少しムッとした。
言おうとしていたことと似たようなことを先に相手から言われるとは。
そもそも、どうして自分が彼女に叱られなければいけないのか。
「俺はそういう人間なんだよ。別に人に好かれたいなんて思ってねぇから知ったことじゃない」
吐き捨てるような皮肉れた声で言い横目にトミーを見ると、今の言葉を聞いた彼女は顔をしかめてきゅっと唇を噛んでいた。
また何か喚くか?と思うと、彼女は口を数回ぱくぱくしてから声を絞り出した。

「私は……!」


「……悔しいの……ッ」


「あ?」

「んーーもーーー弟君遅いね!?」
「いや……時間的にまだ来ねぇんじゃねぇの?」
「そっか、じゃああの丘見に行って良い!?」
怒った口調で言って少し離れたところにある丘に向かってトミーはすたすたと歩き出した。
微妙に肩を怒らせた彼女に疑問の眼差しを向けつつ、離れるのは危険なのでダンはすぐに後を追う。
彼女の歩く速度が『隣りに並ばないで』と言っているので、ダンは彼女の後ろに続きながら疑問符を浮かべた。
ダンの思いやりに欠ける言動について怒るならば分かるが、『悔しい』というのが分からない。
「私は、私はね!?」
「あぁ」
「………………ダンは本当は優しいよ!」



「……何?」
心底「解せない」という険しい表情をするダンを無視してトミーは続けた。
「私は知ってるんだもん、本当は冷たくなんかない、ダンは優しいって。でも、少しダンと会話しただけの人は、ダンがそんな言い方ばっかりするから勘違いするでしょ?!私はイヤだよダンが悪く思われるの!だからヤダッ、悔しいの!!」


………………何言い出すんだお前は……?


ダンは突然勝手な熱を吹くトミーに対して困惑した。
前をずかずかと歩いているヒュームの女戦士が言っていることは、自分にとってどういうものなのかすぐに分からなかった。
ただ、どういうわけかとても恥ずかしく感じている自分がいる。
彼女は結構恥ずかしいことを言っているように思えるのだが気のせいだろうか?
「ダンは不器用だから乱暴な言い方しかできないけど、優しいんだから!」
やめろ、もうやめろ、と言葉を失ったダンは心の中でトミーの背中に言う。
「それにダンは頼りにされることも多いでしょ?実は人気者なんだよダンは。分からないことを聞いたら何でも教えてくれるしね。まぁ多少馬鹿にはされるけど………でも何だかんだでちゃんと教えてくれるし」
「あんまり過大評価するな」
やっと言葉を発することが出来たダンが努めて冷めた声でトミーの熱に水を注す。
「パーティにだってよく誘われるし、ダンの腕はみんなが信用してる」
確かにパーティに誘われることはあるが、それは相手にとって自分が便利な存在だからだ。
狩りの効率が良くなるから誘うだけであって、好かれているとは違う。
そう内心苦笑いしつつ、ダンはトミーの覇気が徐々に衰えていることに気がついた。
落ち着いてきたのだろうか、熱しやすく冷めやすいとはこういうのを言うのだろう。
「ダンを必要としてる人は何人もいるよ。ダンは…凄いもの」
歩くスピードも落ちてきて、何処となく彼女の背中から徐々に元気が失われていくように見える。
続いて呟かれた『私も、人の力になれるように頑張らなきゃ』という一言で、最初に悔しいだなんだと言っていた時に比べて声が酷く悲しげになっていることにも気がついた。
「根は優しいのに口が悪いから勘違いされやすいけど、きっとみんなは分かってくれてるよ?だからロエさんも……………あんなに自分を責めちゃってたんだと思うし。………そっか…そうだよね、ダンはいつも頑張ってるからつい口調が乱暴になっちゃうんだね。頼られる方も大変だもんね。………あんまり頑張り過ぎないようにね?あはは」


「はぁー…………ごめんね、何か。うん、ダンは今のままでもいいんだ。頑張らなきゃいけないのは私の方………うん……」



「私はもっとしっかりしなきゃだけど、ダンはくれぐれも頑張り過ぎないようにね」





「頑張るから、私」




ダンは、がしりとトミーの細い腕を掴んで歩く彼女を引き止めた。
いきなり腕を掴まれたトミーは驚いてダンを振り返る。
振り返った彼女がとても寂しそうな顔をしているのは、何故か予想できていた。
まじまじと顔を観察されるトミーはすぐに口だけに笑みを浮かべてふいっと俯く。
口だけに笑みを浮かべたって笑ってることにはならない。



「お前…何処か行くのか?………何処か…」

遠くへ。



「私は………別に……行くつもりはないよ?」

ダンから顔を背けたまま、トミーは小さく笑いながら答えた。
『どうしてそんなこと聞くの?変なの』と笑うトミーは思い切ったようにダンの顔を見上げる。
そのダンを見上げる彼女の顔は、不自然なほど無邪気な笑顔だった。


『どうしてそんなこと聞くの?』



それはお前が


まるで、『別れが来ても大丈夫』とでも言うような口振りだったから。



自分の知らないところで一体何があったというのだろうか。
今のトミーは自分と距離を取ろうとしているようにしか感じられなかった。


「あっ、ねぇダン教えて?側面に洞窟みたいな入り口がついてる丘がいくつかあるけど、丘の中って空洞なの?」
目指して歩いていた前方の丘を指差しながらトミーは明るい声で尋ねた。
確かに彼女が言うように、小さいがそれなりに高さのある丘に一箇所入り口のようなものがあった。
入り口がついている丘全体を形的に見れば、東方でいう「かまくら」のようである。
このバタリア丘陵の地下にはエルデーム古墳というものがあり、丘にある入り口は地下へと入る階段になっているのだ。
丘にある階段を下りると、トミーが言ったように丘の中が空洞になっていてそこそこのドーム型の空間がある。
そしてその空間の奥に、本格的に古墳へと下りる階段があるのだ。
バタリアで修行をする冒険者達は主に丘の中のスペースに陣を張って狩りをする。
手頃な虎やゴブリンを丘内の空間へと誘い込んで戦うのだ。
入り口が狭く半地下状態のその空間ならば他の敵に絡まれることはないし、もし戦況が危うくなったら古墳の中へと退避すれば
バタリアのモンスター達は古墳の中までは追ってこない。
――――――と、そういった解説文が瞬時にダンの脳内で仕上がった。
しかしその解説を口にする前に、先に言っておくべきことがあるのでは。
するりとダンの手を離れて軽い足取りで丘へと歩みを進め、『ねぇこれ!』と言ってすぐに戻ってくると今度はトミーがダンの腕を引く。
好奇心と期待が入り混じったような声でダンを急かす彼女の横顔を見て、何かを割り切ったような、腹をくくったような顔だとダンは思った。

何故そんな顔をする?




「…………ぁぁぁ………」

その時、そよ風が吹く中でどこからか声が聞こえた気がした。
こもったようなその声に気がついたトミーは疑問符を浮かべて足を止め、ダンも眉を寄せてふと辺りを見回す。
その謎の声が謎ではなくなるまでに、数秒も時間はかからなかった。

前方にある、今トミーが目指していた丘の例の入り口から人が現れた。
後退るようにして入り口から出てきたのは鎧を身に着けた男で、恐れおののいたような声を出している彼が見つめる入り口の中から何かが投げ出される。
一見ボールのような、手頃な大きさのそれが男の胸元に当たると男は盛大に尻餅をついた。
座り込んだ男――恐らくエルヴァーンだ――は慌てて入り口に背を向けて駆け出そうとするが、続いて入り口内から飛び出してきた人物がその背中に向かって大きな鎌を振りかぶる。
鎧を噛み砕くように、その大きな黒い鎌が男の背中に噛み付き、男はそのまま地面へ斬り倒された。
「―――――ッハハァ!」
断末魔をあげる男の背中を嘲笑しながら踏みつけるその鎌を持った者は、長い銀髪を薄汚れた外套に下ろした鎧姿のエルヴァーンであった。


今まさに目の前で、エルヴァーンの男が同族の男に斬り殺された。
よく見ると男に投げ付けられて地面に転がったものは―――人間の首!!!
「―――や……っ!!」
トミーがダンに飛び付いたのと、ダンがトミーを抱き寄せたのはほぼ同時だった。
「やあぁ!!」
ダンの胸元にしがみ付いて悲鳴を上げるトミー。
彼女が目の前の光景を見ないように頭を抱き込んで、ダンは現れた人物に目を見張った。
長い銀髪、黒い外套、所々痛んだ鎧を身に着けた、黒い大鎌を持ったエルヴァーンの男。

――――――――こいつだ!!!

ダンは昨日友人のエルヴァーンから聞いた男の特徴と彼を照らし合わせて確信した。


長い髪の隙間から歪んだ口元が見える男が、二人の存在に気がついて向き直る。
汚れてガサガサになり黒ずんだ長い銀髪の間から嘲笑した男の顔が覗いていた。
しかし、次の瞬間そんな男の顔から表情がふっと消え失せる。
その時にもう一つの特徴である“眉に傷”も確認できた……が、それよりも。

男の見開いた目は、ダンにしがみ付いて震えているトミーをじっと見つめていた。


全体的に黒い男の身体を染めているのは、どう考えても返り血。
現に見ている前で一人殺してる、あの首の主もこの男がやったに違いない。
あの丘の中には他にも遺体が?
興奮して息の上がった肩、くすんだ目、人の血で派手に汚れた顔。

こいつは、ヤバイ。




ダンは、今絶命したばかりの者を踏みつけたまま硬直している男を凝視して全力で考えた。
どうする―――剣を―――――――抜くべきじゃない。
抜いたら駄目だ、どちらかが確実に死ぬ。
腕の中には?―――――泣いてるのが一人。
お前は逃げろ?現実的じゃない
――――――最優先は?
―――――――――当然。
「おい…」
トミーを抱き締めて男を凝視したまま、ダンは彼女を小さく呼んだ。
聞こえるのは嗚咽のみ、返事はない。
「走れるか?」
トミーはぎゅっとしがみついて必死に頭を左右に振るが、こっちの言ったことを理解できているのか怪しい。
あんなものを目の前で見てしまったからだろうが、腕の中の彼女は明らかに怯え切っていた。
いや、それにしたって様子がおかしい。
息ができないのか?逆に過呼吸になってるのか?
とにかく苦しそうだ、今は男から目を逸らせないので様子を見ることはできないが。   
何もこいつの前でやるこたねぇだろ―――――――毒付くのは後だ。

「無理でも走れ」


追ってきたら?―――その時は―――――――――――――――――なるようになる。





ダンは最後まで男から視線を逸らさず、意を決してトミーの手を引き駆け出した。
目指すはジュノの町だ、そう遠くはないので逃げ切れない距離ではない。
瞬間どうなるかとひやひやしたがトミーの足は動いた。
しかし油断すると砕けてしまいそうなのでその隙を与えぬよう彼女にお構い無しで疾走する。
頼むから意識を手放すことだけはするな。
苦しげな嗚咽を背中で聞きながら肩越しに振り返ると、手を引かれて走らされているトミーのずっと向こうに男の姿。
男はあの場に呆然と佇んで、じっとこちらを見つめていた。
微かに期待したように、男は追ってくる気はないようだ。
ダンは賭けに勝ったと内心酷く安堵すると同時に引き返したい衝動に駆られた。
誰だ、どうして、そいつらは、何故そんな目でこいつを。
しかしダンは、そんな自分の欲求を解消するよりも今自分が手を引いている者を守るため、対面することを強く望んでいた男に背を向けて走り続けた。





「あっ、この野郎朝っぱらから……!!」
「あ、トミー姉ちゃん実は――ってどうしたんすかぁぁぁぁぁぁ!!!?」




ジュノの通りを駆け抜けた時、賑わいの中からそんな声が聞こえた。
『弟に来るなと伝えろ』と怒鳴っただけでダンは見向きもしなかった。




大の男の駆け足に無理やりついてこさせられたトミーは、冒険者居住区の入り口付近でさすがに力尽きてしまった。
ダンも鎧を身に着けての長距離の疾走はしんどかったので相当消耗していたが、迷うことなくトミーを抱え上げてとりあえず近い自分のレンタルハウスに向かいドアを蹴り開けた。
トミーが首にしがみついてくるので尚更苦しいが彼女は気が動転しているのだ、仕方がない。
とは言ってもやはり苦しい、ので下ろそうとしたがトミーは頑として離れようとはしなかった。
泣き声の中から『嫌だ』と叫ぶ。
『落ち着け』『大丈夫だ』と繰り返し言い聞かせるがまったく通じない。
いい加減自分も限界のダンは、彼女を引き離すことを諦めてそのまま床に座り込んだ。



“パリス……ロエさん……緊急事態が起きた大至急俺の部屋へ………”
リンクシェルで呼びかけると息絶え絶えの疲労感がにじみ出た。
“………ぁ、おはようございます”
“んぇ、何?な”
“ロエさんはあのネコも呼んできてください”
“は、はい”
“ナニ緊急事態って??”

ぐったりと座り込んで、未だにしがみついて泣いているトミーの頭を見下ろす。
トミーは泣きながら『どうして』と繰り返していた。
ふと先程見た光景を思い返すと、さすがにダンも表情をしかめる。

どうして?
まったくその通りだ。

狂気を感じる男の表情が消えた時のあの目。
あれは何を意味する眼差しなのか。
そして自分にしがみついたまま泣き続けているこの娘の取り乱し様は。
殺しの現場を目撃したからなのだろうか、他に何かあるのでは?
もしやこいつはあの男を……?


「………変態が言ったように…忙しくなりそうだなオイ」

泣きじゃくっているトミーを抱き締めるわけでもなく、ただぐったりと座り込んだ状態で、ダンは昨晩ここに来て勝手に喋りまくっていった金髪碧眼の男の言葉を思い出す。
そして、召集をかけた仲間達の一分でも早い到着を願った。



泣いているこの娘を託して、あの男と話をつけに行くために。



<To be continued>

あとがき

もう10,000文字超えちゃった時点でヤバイと思いましたよ。
ダンがいなくても大丈夫なように強くなろう!と無理矢理前向きに考えるトミーと、いきなり独立宣言を聞かされワケも分からず動揺するダン。
改めて見るとこの第九話、メッチャクチャ甘くないすか?
相当ガチじゃん、ダンテス(;´∀`)