光の方へ
2026/06/19公開
――チャリ……チャリ……。
微かに零れ落ちる金属の音が、遠くから聞こえてくる。
ノルヴェルトが目を開ける。
薄暗い森の緑。
揺れる視界の中で、自分がチョコボの背にいることに、ゆっくりと気づく。
その羽根は、くすんだ黄色――どこか懐かしい色だった。
息も絶え絶えのチョコボが、森の斜面をよろよろと進む。
やがて脚がもつれ、バランスを崩して茂みの中に倒れ込んだ。
ノルヴェルトの身体も投げ出され、地面に叩きつけられる。
肩と背中の傷が痛み、視界が霞む。
もう動けない。
冷たい土が体温を奪っていく。
分からないままだ。
自分は、あの人達のために何ができたのだろうか。
もう守れない。
できることは、もう、何も。
傍で横たわる鳥が弱く鳴いた。
……その時、足音が近づく。
誰かいる。
そう気付いても、身体は指一本動かなかった。
茂みを掻き分ける音がした後、声が降りてくる。
「なんだ、こんなところにいたのか」
懐かしさに、ノルヴェルトは息を呑む。
その声を、知っている。
肘をついて振り返ると――
太い腕を腰に当てたドルススが立っていた。
「おーい! こっちにいたぞー!」
彼が呼びかけると茂みの向こうから、次々と姿が現れる。
呆れたように眉をひそめた白髪のミスラ、セト。
「へー。サボりなんて、いい度胸じゃん」
むっつり顔をしたタルタルの魔道士、ワジジ。
「やっぱりお前は半人前だな、でかいのに」
ノルヴェルトは、声も出せないままぽかんと見上げるばかり。
夢か、幻か。
見兼ねたドルススが笑い、手を差し伸べた。
「ノルヴェルト、早く来い」
ノルヴェルトの細く小さな手を、ドルススの剛腕が引き上げる。
気づけば、ノルヴェルトの身体は少年のものになっていた。
大きなドルススに促されるまま、震える足で茂みを抜ける。
すると、柔らかな光が差す向こうに、懐かしい姿が立っていた。
金髪を風に揺らし、スティユがこちらを見て微笑む。
その傍らには――
この目で何度も探し、見つけてきた、彼女に判断を仰がれる人の立ち姿。
外套が風に膨らみ、黒髪が微かに揺れる。
スティユの視線を辿るように、こちらを振り返る。
若々しくも穏やかな、ブラウンの瞳。
……マキューシオ。
声が、出なかった。
佇むマキューシオを見た途端、ノルヴェルトの表情が幼いものに戻った。
耐えてきた年月そのものが、胸の奥から逆流してくる。
「……マキューシオ……ッ」
もう一度呼ぶと、今度は声が絞り出される。
涙が溢れ出して止まらなくなっていた。
顔がくしゃくしゃに歪む。
声を立てて息を吸い込むと、そのまま大泣きへと変わる。
幼子のように口を開いて泣き叫んだ。
もう、どうしようもなく、止まらなかった。
ヒュームの剣士が、静かに歩み寄る。
その足音は落ち葉を踏むたびに柔らかく沈み、まるでノルヴェルトを気遣っているようだった。
「ノルヴェルト。……どうして泣くんだ?」
穏やかで、昔と変わらない声。
その響きに触れた途端、ノルヴェルトの胸の奥がぎゅうっと縮み、さらに涙が溢れ出した。
喉を引きつらせながら、無理矢理、言葉を絞り出す。
「――ぼ、ぼくは……っ」
叫ぶように震える声を吐き出し、止め処なく涙の溢れる目元を拭う。
「僕は……!」
わななく顎で必死に、師へ。
「僕は……マキューシオと、いて……っ、よかったの?」
声が裏返り、涙が言葉を飲み込みそうになる。
それでも、尋ねずにはいられなかった。
自分がずっと知りたかったことだから。
「本当に……っ、僕はみんなに、ついて行って……よかったの……?」
震える問い。
マキューシオは、すぐに答えを返さない。
いつもそうだった。
少年の問いを、その震えごと受け止めるような静けさを置く。
沈黙を破ったのは、横から伸びてきた二つの影だった。
呆れ顔のセトと、しかめっ面したワジジが顔を寄せてくる。
そして、ばしっと遠慮のない手がノルヴェルトの頭を叩いた。
「「い~に決まってるだろ!」」
声は、笑っていた。
その瞬間、ノルヴェルトの胸の堤防が音を立てて崩れた。
顔を覆い、しゃくりあげ、幼い嗚咽が指の隙間から漏れる。
「――そんなはずないよ!!」
感情だけで放り出されたような少年の叫び。
涙がぼろぼろと落ち、エルヴァーンの少年の震える肩が小刻みに跳ねる。
「僕がいたからっ! 僕が、子どもだったせいで……!」
俯いたまま、搾り出す。
「マキューシオが……全部、背負うことに……なってしまったんだ! だ……だから、マ、マキューシオは……っ、ぁ……っ」
そこまで言って、少年は喋れないほどに号泣する。
その言葉を聞いた瞬間、マキューシオの瞳がかすかに揺れた。
切ないほど優しい色で、少年をそっと見つめる。
そして静かに、ゆっくりと首を横に振る。
それからその両腕で、包み込むように抱きしめる。
「時代が……私が……君の成長を、待ってやれなかっただけだよ」
酷く優しい声で、諭すように言う。
それから、腕の力を抜き、ゆっくりと身体を離した。
そして、昔と同じく、ノルヴェルトの頭に彼の手が置かれる。
「君は、何も悪くないんだ」
ノルヴェルトは涙の膜越しにマキューシオを見上げ、喉を鳴らしながら言う。
「マキューシオは……っ、優しすぎるよ!」
子どもの、不満と甘えが混じった声。
それすら愛おしく受け取るように、マキューシオは柔らかく笑った。
彼は膝をつき、自らの目線をその未熟な目線に合わせる。
「私はね……素直で真っ直ぐな君を、どうしても護りたかったんだ」
微笑みはどこか痛みを抱えていた。
そして言葉をつなぐ。
「でも私は……自分を、過信してしまった」
胸が張り裂けそうなほどの、後悔の瞳。
「許してほしい……」
そう言って、出会ったあの日と同じように頭を垂れる。
その姿にノルヴェルトの胸がひっくり返るように痛んだ。
ぶんぶんと首を振り、少年の手がマキューシオの頬をぐいと押し上げる。
「顔を上げて、マキューシオ!」
一瞬驚いたように目を瞬くと、マキューシオは静かに微笑んだ。
涙まみれの少年が映り込んだその瞳は、深いブラウンで、限りなく優しい。
そしてそこに――希望の光が差す。
「ノルヴェルト」
彼は少年の肩に静かに手を添え、祈るように告げた。
「どうか……生きてくれ」
その言葉に呼応するように、周囲がふっと揺れた。
まるで水面から光が差し込むように、柔らかな輝きが世界を満たしていく。
ドルススが腕を組み、胸を張って笑う。
「そうだ。お前は生きろ! ノルヴェルト」
ワジジも、真っすぐで、どこか優しい視線を向ける。
「お前は生きろよ。俺達がいなくても」
スティユは静かに瞳を細める。
「あなたには、未来を生きてほしい」
セトは両手を腰に当てたまま、ふっと明るく笑う。
「生きるんだよ……ノルヴェルト!」
その声は、遠くまで届く鐘の音のように、胸の奥へ染みていく。
セトの傍らに、一羽のチョコボが駆け寄った。
若々しい羽根が、光に照らされて懐かしい黄金色に見える。
セトが首を撫でると、チョコボはノルヴェルトに向かって一声鳴いた。
ノルヴェルトは目を見開き、背筋を伸ばす。
肺が大きく空気を吸い込む。
次の瞬間。
肩にパンッと、手が置かれる。
振り返ると、漆黒の鎧をまとったエルヴァーンが、振り向きもせず横を通り過ぎていく。
フィルナードが、あの頃のままの笑みを残す。
「じゃあな、ガキ」
その言い方すら懐かしくて、胸が震えた。
気づけば、ノルヴェルトは青年の姿で皆を見つめ返していた。
セトとワジジが同時に肩をすくめる。
「いくら聞き分けの悪いあんたも、これだけ言えば、さすがに分かるっしょ!」
「いい加減言うこと聞けよ。お前もう、いい歳だぞ?」
からかいながらも、目元は温かかった。
再び、世界の輪郭がやわらかく滲んだ。
マキューシオも、みんなも、ゆっくりと後ろへ下がっていく。
立ち去るというより、光に溶けていくように。
思わずノルヴェルトの足が一歩、彼らを追った。
手が伸びる。
呼び止めれば、まだ間に合う気がした。
――行ってしまう。
胸が張り裂けそうだった。
――みんなが、行ってしまう。
だが、踏みとどまる。
その足を止めた瞬間、仲間達は揃って微笑んだ。
誇らしげに、嬉しそうに。
ノルヴェルトは拳を握りしめ、震える息の中で言葉を探す。
「俺は……」
言葉より先に涙がこぼれ落ちた。
ひと粒、ふた粒――止められない。
どうしようもなく唇が震える。
でもこれだけは、はっきりと伝える。
「みんなに出会えて……幸せでした」
あふれた涙は視界を歪ませる。
それでも彼は、笑っていた。
「ありがとう」
声が掠れる。
でも絞り出す。
「俺…………やってみます!」
胸の奥から、今まで言えなかった言葉すべてを放つように。
涙が頬を伝い続けても、顔は前を向いていた。
マキューシオ達は穏やかに微笑み、その姿を光に溶かしながら、そろって歩き出していく。
ノルヴェルトはその背中を、まっすぐ見送った。
そして、あふれる光に抱かれ――
彼自身も、その中へゆっくりと溶けていった。
―――――
まぶしい光が、瞼の奥に差し込んだ。
頬を撫でる風の匂いが変わっていた。
焦げた匂いの代わりに、湿った土と草の匂いがする。
ノルヴェルトはゆっくり目を開けた。
木々の隙間から、夜がまだ退ききらない藍色の空が見えた。
そして、見知らぬ者たちが上から覗き込んでいた。
「あ、気がついた!」
ローブ姿のミスラが、声をあげる。
目を瞬き、ノルヴェルトはゆっくりと上体を起こした。
すると、鎧を身につけたエルヴァーンの女性がほっと息を漏らす。
「良かった。……どこか痛むところは?」
状況が呑み込めないまま、ノルヴェルトは黙って首を横に振る。
「何に襲われたのか分からないけど、間に合って良かったよ!」
ダブレット姿のヒュームの男性が、安心したように笑う。
呆然と周囲を見回すと、木々が見下ろす茂みに囲まれた、落ち葉の上。
「あなたが握り締めていた剣も、ちゃんとある」
鎧姿のエルヴァーン女性が傍らを指し示す。
そこには、両手剣。
先ほどのミスラが小さな声で続けた。
「……でも、チョコボは助けられなかった」
彼女の視線の先にふと目をやる。
傍らに、色褪せた羽根のチョコボが静かに横たわっていた。
「怪我はしてないし……寿命だったのかな……?」
彼らとともに、動かないチョコボを見つめる。
ノルヴェルトはそっと手を伸ばし、冷えた羽根を撫でた。
風が草木を撫で、ノルヴェルトの銀髪を揺らす。
「どこかまで送りましょうか?」
上から、柔らかな声が降ってくる。
彼らは冒険者だ――その事実がようやく胸に落ちた。
不思議そうに自分を見つめる彼らに、ノルヴェルトは顔を上げる。
「いや……大丈夫だ」
「他に手伝えることは?」
なおも心配そうに問われ、ノルヴェルトは慌てて掌を向けた。
「ほ、本当に……大丈夫だ。行ってくれて、構わない」
うつむきながらも、静かに言葉を添える。
「……ありがとう」
その声を受けて、冒険者たちはふっと微笑み、背筋を伸ばす。
手を振ると茂みを抜け、白みはじめた森の奥へ消えていく。
彼らを見送り、ノルヴェルトは茂みの中を振り返る。
残されたチョコボに静かに歩み寄ると、膝をついた。
もう一度、色褪せた羽根に触れる。
羽毛は変わらず柔らかい。
けれど、その身体に命のぬくもりはなかった。
横たわる顔を覗き込む。
大きな瞳を閉じたまぶたは穏やかで、長い旅路を終えた安堵だけが残されていた。
……お前だったのか。
胸の奥で名を呼ぶ。
荒野を渡り、戦場を駆け抜けた日々。
やり場のない感情に苛立つ未熟な自分。
それを不思議そうに見つめる、澄んだ丸い瞳。
ーーマイロ……。
お前が……みんなの近くまで連れて行ってくれたんだな。
おかげで、もう一度……みんなに逢えた。
力尽きたその身体を、そっと抱き締める。
声の出ない口が『ありがとう』と囁いた。
何度も、何度も。
木々の隙間から射した光が、羽根の上に静かに降り注ぐ。
澄んだ空気が、かつての絆を、静かに抱き締めた。
* * *
王都の午後。
トミーは通りの一角で立ち止まり、たくさんの穀物を積んだ台車を引いて歩くチョコボを眺めていた。
陽の光を受けて羽を揺らし、行き交う人々の流れに乗ってゆっくりと見えなくなっていく。
その姿は、どこへ向かうのかも分からないまま、ただ前へと歩き続けているように見えた。
「何なの、気色悪いったらないわ!」
不意に、賑わいの中から知った声が聞こえた。
振り返ると、往来の間を縫ってパリスとリオがやってくる。
パリスが言葉の代わりに小さく手を振り、トミーの隣に立つ。
「やっぱり、気のせいじゃないよねぇ……って、話してたんだ」
困ったように眉を寄せ、やや潜めた声で呟く。
何となくトミーは周囲に視線を巡らせた。
先日銃士隊に一時身柄を確保されたものの、お咎めなく解放されたパリスとリオ。
しかし、実際にはまだ監視下にあるようだ。
行き交う人々の中に、ほんのわずかに混じる“こちらを窺う気配”。
「……ま、王国から注目されるよりは、断然気が楽だけどね」
小さく息をつき、ぽつりと零すパリス。
共和国は、貴族のお家事情などには微塵も関心はない。
すると――城の方向から、タルタルの女魔道士が軽い駆け足でやって来るのが見える。
丁度前を横切る冒険者の流れをやり過ごし、ようやく傍までたどり着く。
「ロエさん」
安堵と緊張が混ざった声でトミーが呼ぶ。
胸に手を当て軽く息を弾ませたロエに、パリスは労いの眼差し。
「ご苦労様です。……納得いただけました?」
「はい、どうにか……」
先日の聴取を経て、改めて王国よりダンの所在を問われた。
王国がこれ以上ダンと接触することを、炎上した冒険者たちが断固拒否していたわけだがーー
ロエは、そんな事態の鎮圧に、当事者であるダンが動いていると報告。
今回の騒動を“内部不祥事”として処理したい王国にとっては、願ってもない流れ。
状況は終息に向け、また一つ、前進の気配を帯びた。
「……ありがとうございます」
トミーが、少し視線を落としながら言った。
まだ少し重い空気が、四人の間に滲む。
そのまま立ち止まってしまいそうな空気を振り払うように、パリスがわざとらしく歩き出す。
苦みを抱えたまま仲間達の足もそれに続く。
高く水を噴き上げている噴水が遠くに見えてきた頃。
パリスが硬い表情の中で軽く笑って、街中を眺めながら言った。
「ホ~ント……どこ行っちゃったんだろね、あの子は」
彼が言っている“あの子”と言うのは、年老いたチョコボのこと。
老いて力もないはずの一羽のチョコボが脱走してから、三日が経っていた。
臨終が近いチョコボが、何かに呼ばれているかのように外に出たがることは、今までも見たことがあった。
ただ、最後の力を振り絞り脱走までしたことはなかった。
仲間達は視線を散らし、小さく頷きを返す。
皆の目が探し求めているのは、チョコボだけではない。
この三日間、誰も口にはしないが――
ある人の姿もずっと、祈るように探し続けていた。
トミーも、ロエも、リオも。
彼女たちは、チョコボが失踪したその夜、王都の一角で何が起きたのか正確には知らない。
でも、空気や沈黙から、何か大きなものが失われたことを感じ取っていた。
うまく笑うことのできないパリスの様子から、きっと彼は知っているのだと、察するだけに留めていた。
サンドリアの町は至っていつも通り。
日常を営む王都の民たちと、通りを行き交う冒険者たちの賑わい。
レンガ造りの街並みの片隅では花が風に揺れ、街の子ども達が駆け抜けていく。
ロエが少し俯いて、何かを言いかけた――その時。
リオがふと、通りの向こうを見て目を見開く。
「……え?」
往来の人々の向こうから、ゆっくりと近づいてくる。
人の声、鳥の声、日差しの中のきらめき。
その中を、煤けた外套の男が歩いてくる。
風に銀髪が揺れて、彼が顔を上げた瞬間――トミーの息が止まる。
「帰ってきた……?」
リオが信じられないように小さく呟き、パリスが息を呑む。
ノルヴェルトは、眩しそうに目を細める。
その瞬間、トミーが駆け出す。
周囲の音が遠のいて、噴水の水音だけが響く。
風に噴水のミストが混じる中、ノルヴェルトがトミーを抱き止めた。
トミーの手が震えて、ノルヴェルトの外套を握る。
ダンの両手剣が、彼の背に静かに収まっていた。
仲間達も駆け寄る。
トミーはもう、嗚咽を我慢できなかった。
声を上げて泣きながらノルヴェルトにしがみつく。
ノルヴェルトは彼女を銀髪で覆うように屈み、無言でそれを受け止める。
言葉が出ない仲間達はその様子に見入った。
間を置いて、やっとの思いで言葉を紡ぎ出したのは、髪を掻き混ぜたパリス。
「……生きてた……」
呆然と呟き、はっとして手を叩く。
“――ダン! ねぇ、ダン! ノルヴェルトさん帰ってきたよ!!”
リンクシェルに叫ぶ。
“あ?”
定番の面倒くさそうな声が返す。
“そうかよ”
通信、終わり。
「た……淡白ぅ」
苦笑いしてチーンと空を仰ぐパリス。
トミーは泣きながらも、ようやく言葉を発せられるようになった。
今のやり取りを耳にして、外套に顔を埋めたまま言う。
「……ノルヴェルトさんもパール、持ってたはずです」
ハニーブロンドの髪から聞こえたのは、不満の色が混じった声だった。
ノルヴェルトは少し焦った顔になり、トミーの肩に手を置く。
「あ……ど、何処かで、失くしてしまったみたいで……」
歯切れ悪く言いながら、眉を寄せてトミーを覗き込む。
そして、はっとわずかに目を見張ると、トミーから手を放した。
ロエも込み上げた涙を指で拭いながら、安堵の表情を浮かべている。
くすんと鼻を鳴らして言う。
「本当に、ご無事で良かった……!」
「うん……」
頷きながら目を細めるパリスの後ろで、リオが険しい顔をする。
まるで、ノルヴェルトに対して『もっと離れなさいよ』とイライラし始めたかのよう。
見かけ通り不機嫌な声で言う。
「まだ、行方不明のチョコボのことは片付いてないじゃない」
『あ』とパリスが表情を固める。
しかし、そこでノルヴェルトが顔を上げた。
「年老いたチョコボなら、眠った」
彼のその言葉に、皆の視線が集まる。
ノルヴェルトはトミーに再び視線を落とす。
「その弔いをしてきました。帰りが遅くなって……すみません」
視線の先のトミーは、顔を上げていた。
涙でいっぱいの瞳が、ふわりと微笑む。
ノルヴェルトも泣き出しそうな目になりつつ、微かに表情を綻ばせた。
その光景を見つめる仲間達は、それぞれの胸に言葉にならない想いを抱いた。
リオは唇を噛む。
ロエは胸に手を当てて、少し不安げな目をした。
パリスは笑おうとしたが、全然うまく笑えなかった。
――微笑むトミーの瞳は、果たしてどんな未来を見ているのか。
静かなざわめきが、ふと仲間達の胸をよぎる。
誰も何も言わなかった。
ただ、見届けるしかないのだと、それぞれが口を引き結ぶ。
やがて、パリスが髪を直しながら声を絞る。
「……姉さんに、教えてあげないとだ」
弱く言って、来た道をゆっくりと引き返そうとする。
ロエも彼を見上げて小さく頷いた。
するとそこで、リオが大きな溜め息を吐き出す。
「はぁ~~~あ!」
あまりにも浮いたその声に、皆が目を瞬く。
少しだけ、周囲の賑わいが皆の耳に戻る。
「……まぁ、じゃあ、これで一旦片付いたわね」
この先のことへの興味関心を断ち切るように、突如そう締めくくるリオ。
ミスラ族特有の尻尾を揺らしながら続ける。
「あたし、帰るわ」
「え?」
短く声を漏らすパリス。
トミーも不思議そうな顔でリオに身体を向けた。
何となく、ニュアンスがいつもと違う気がして、問う。
「リオさん……帰るって?」
「旦那んとこ」
「「――だっ?!」」
驚いてトミーとパリスが絶叫する。
「……ぇえっ!?」
ワンテンポ遅れて、ロエも声を上げて口を押さえた。
リオは指に髪を絡めながら、しれっとしている。
口をぱくぱくして、声を捻り出すトミー。
「リオさん……だ、旦那さんいるんですか!?」
「はあ? いるでしょ」
「知りませんでしたよぉ!!」
トミーは両頬を押さえてなおも絶叫する。
「何よ。独身だなんて、あたし一言も言ってないじゃない」
そんなことを言ってイラついたように目付きを鋭くする。
驚愕と抗議の眼差しをものともしない彼女は、相変わらず自由だった。
「さすがに疲れたから、帰るわ」
飛んできた綿毛でも払うかのように、ヒラヒラと手を振り、踵を返す。
そのまま、人の往来の先に気ままな足取りで見えなくなっていく。
王都の通りの賑わいが、仲間達の沈黙を塗りつぶしていく。
あんぐりと口を開けたまま硬直していたパリスが、思い出したように声を上げた。
“――ダン! ねぇ、ダン! リオさんて誰かの奥さんだった!!”
リンクシェルに叫ぶ。
“あ?”
定番の面倒くさそうな声が返す。
“そういや、変態もンなこと言ってたぞ”
通信、終わり。
「……もう、何なの」
顔面を両手で覆って空を仰ぐパリス。
先程からパリスが一人でジタバタしているのを眺めて、ノルヴェルトはぴくりと眉を動かした。
『ソレリ』と、トミーのことを呼ぶ。
「彼は……まだ、動けないのか?」
そう尋ねるノルヴェルトを、トミーは不思議そうな目で見上げる。
しかし、ダンのことを言っているのだとすぐに気付く。
「あ、えっと……ダンは……」
チラリと横目にパリスを見た。
眉を寄せて視線を辿るノルヴェルト。
苦笑いしてパリスが答える。
「あ~……ダンは、もう元気です。と言うか、休ませてもらえない? みたいな感じで」
状況が飲み込めないノルヴェルトが怪訝な顔をする。
しかし、パリスはひとつ息をつくと、わずかに声のトーンを上げて言った。
「ささっ。とにかく、姉さんに報告しに行かないと!」
手を叩き、歩き出す。
パリスに頷きを返し、ロエも続く。
ロエから優しい眼差しを受けたトミーも、表情をわずかに明るくした。
だが、歩き出そうとする彼女を声が引き留める。
「ソレリ」
はたと足を止め、振り返る。
ノルヴェルトが真っ直ぐ見つめていた。
目を瞬くトミーに、気を回したロエが『先に歩いてますね』と小声で伝えて進んでいく。
噴水の水音だけが響いている。
それがやけに遠く、冷たく聞こえた。
ノルヴェルトは、じっと彼女を見つめる。
先ほど見せた明るい表情の奥に、隠し切れない赤い目元。
この数日、何度も泣いたのだろう。
少し痩せたような細い肩。
抱き締めたぬくもりを思い返し、胸の奥が痺れる。
微かに口を動かし、ようやく言葉がこぼれた。
「……帰って、きました」
トミーは息を詰まらせ、胸の前でそっと手を握り締める。
瞳がゆっくりと潤んで輝いた。
「はい。……おかえりなさい」
その儚い微笑みに、胸の鼓動が熱く震えた。
ノルヴェルトは静かに息を整える。
大事な――
大事なことを、今から伝える。
彼女はマキューシオの娘だ。
だから……決意は固く、簡単には揺るがないかもしれない。
それでも――。
みんなから託された想いが、胸の中で確かに鼓動する。
ノルヴェルトは言葉を探した。
喉の奥で、何度も躊躇う。
「…………」
尊い光を宿した瞳が、まっすぐ自分を見つめている。
目を逸らさずに、言葉を紡ぐ。
「……私にとって……」
風が通り抜け、噴水の音をさらって行った。
「マキューシオ達との……思い出は、幸福そのものです」
その言葉に引き寄せられるように、トミーがそっと歩み寄る。
ノルヴェルトは臆せず続けた。
「私は……彼らに恥じぬよう、“償い”を探しながら……前に進みたいと、思っています」
彼女は黙って、ただ優しく聞いていてくれた。
その瞳には、寄り添う気持ちと、確かな強さ。
師がいつか見せた光と重なり、胸が切なく締め付けられる。
その瞳は――“ともに歩む”と語っていた。
ノルヴェルトは内心首を振り、必死に言葉を続ける。
「でも……貴女は、違う」
小さく震える瞳を見つめ、一層胸が苦しくなった。
子どもだった自分を見守るみんなが、心から望んでいたこと。
みんなのその願いが、ようやく理解できた。
そして耳の奥から蘇る。
彼の――彼女に向けた“願い”の言葉。
あの瞬間、ノルヴェルトは確信したのだった。
悲しみはない。
涙なんて流さない。
ただ、祈るように、背中を押す。
「貴女の向かうべき先は……彼です」
その言葉に、トミーの瞳が揺れた。
けれど、すぐに強く瞬きし、胸元をぎゅっと握り締める。
「――私は」
トミーは震える声で、さらに一歩近づく。
「ノルヴェルトさんを……もう、一人にはしません」
ノルヴェルトがわずかに目を見開く。
「私は……私はノルヴェルトさんを――」
想いが溢れて止まらなくなる。
必死に、涙をこらえて言葉を続ける。
「悲しみから、守りたい……! あなたを支えたいんです。だって……ノルヴェルトさんが……っ」
感情が胸の奥を押し上げて、声が詰まる。
ノルヴェルトは銀髪の奥で、ぐっと痛みを耐えるように目を閉じた。
「……ソレリ……」
思わず、静かに呼ぶ。
やはり――
それほどまでに、彼女は自分の悲しみを受け取ってしまった。
そして胸の奥で、ノルヴェルトは深く懺悔した。
自分たちの憎しみの連鎖を、無関係な男に背負わせてしまったことを――。
当然、訪れた。
身を焼き尽くそうとする感情の炎がうねりを上げた、あの場所に。
激しい炎が沈んだ跡と、辺りを包む喪失の空気が――
すべての顛末を伝えてきた。
彼女もきっと、その重さを痛いほど感じ取っているはず。
それでも、震える足はノルヴェルトの方へ向かう。
なぜなら――
彼が、自分の背負ったものを見せずに、最後まで彼女の意思を尊重するからだ。
どうか、縛られないでほしい。
大切な人達から託された想いとともに、強く、願った。
想いを乗せて言葉を紡ぐ。
「……罪は、私だけのものです」
トミーの肩が震える。
ノルヴェルトの瞳が、大事そうに彼女のことを見つめた。
「私を“救う”のではなく、貴女は……幸せになるんだ」
その声はどこまでも深く、温かく、祈るようだった。
緊張と必死さを緩め、ノルヴェルトはふわりと優しく目を細める。
「私は……大丈夫です」
その瞳にはもう、孤独の暗がりはない。
「貴女が、幸せに笑っていてくれるのならば」
涙が溢れて止まらなくなるトミーの瞳が、小さく煌めく。
まるで“未来”という光が、差し込んだように。
* * *
昼下がりの南サンドリア――冒険者のモグハウス地区前。
鎧の金属音を鳴らしながら、階段を上へと突き進む。
腰には長剣。左腕には盾。
背中にいつもの両手剣はない。
どっかの誰かが一向に返却に来ないせいだ。
「ーー明日もだぞ!ダン!」
離れた場所から念を押すような声が飛んでくる。
「ここぞとばかりにうるせぇな! いい加減にしろ、廃人どもっ!」
肩越しに振り返って怒鳴り返す。
先日、ミッションを手伝う口実で呼び出した冒険者仲間だ。
あの時はそんな約束をすっぽかした挙げ句、エキストラとして派手にこちらの騒ぎに巻き込んだ。
忙しく冒険に励む彼らの怒りは相当なもので、連日クレームの嵐。
その代償を、ダンは文字通り、体で払っていた。
ことさら、しかめる眉間のしわの深さは、三割増しだ。
なぜならば、ダンが安静を奪われた原因はそれだけではない。
二日前に現れた、あの男だ。
――――
首筋がチリチリするような不快感。
夜明け前のまだ暗い時間に構わず、ダンは目を見開いた。
横を向くと、部屋の椅子にローディが足を組んで腰掛けていた。
暗い中、ローディが呪文を呟く。
魔法の炎が蛍のように四方に飛び、部屋の明かりを灯した。
ダンが上体を起こす。
魔道士の顔は涼しげに微笑を浮かべていた。
椅子の背にもたれ、肩をすくめる。ローブの装飾が小さく鳴って煌めいた。
「どうせ、王国が気にしてるのは、“炎”じゃなくて“剣”だろう?」
夜の静けさにちょうどいい、しっとりとした口調でローディ。
だが、そこに少し不満の響きが混じる。
「密輸車ごときに俺様がついてやってさ。ミッションコンプだったじゃん。……最後にとんだ暴発だな」
どこか遠い、夜の暗がりを眺めながら息をつく。
青い瞳に灯りが揺らめく。
「まぁ、バスよりは短時間で終わって良かったな。こっちはクソめんどかったぞぃ」
裾を払い、足を組み直しながら魔道士は言う。
ダンが確認する。
「バストゥークは何て言ってる」
「所詮、形式だけだ。ププ……後ろめたいことしてるからだよにゃ~」
徐々に普段のだらしない雰囲気を滲ませ始める。
ローディの言う通りだ。
バストゥーク共和国からサンドリア王国に照会が入るのは当然だが、追及まではできないだろう。
噛みつけば、己の尻尾も掴まれるからだ。
ダンも、今日の城の空気と静けさを省みる。
あそこもまたーー真実よりも“処理”を求めていた。
「火は……広がらない」
ぽつりと薄暗い部屋に、ダンの呟きが落ちる。
「……まぁ、そんなことよりも……」
ゆっくりと――
「ダン」
強く、はっきりとした口調でローディが調子を変えた。
そして静かに、金髪の中に両手を差し込む。
「俺様の火は……絶賛炎上中だぞぃ?」
珍しく声を絞り出す、美しい魔道士。
『は?』というダンの反応を見て、彼は椅子を蹴って立ち上がる。
「ーーあたいが知らないとでも思ってんの!?」
突如、芝居がかった声を放つ。
つかつかと歩み寄る。
そして――浮気の証拠を突き付ける女のように。
ローディは懐からブルーのリンクパールを取り出し、ダンに見せつけた。
瞬時に、ダンは悟る。
奴が持っているそれは――
元々、リオに渡してあったリンクパールだ。
パリスがリーダーである、自分達のリンクシェル。
くすねたまま。
恐らくこの男は、ずっと、聴いていたのだ。
“すべて”を。
「俺様もダンが欲ーしーい!
だから、取りに来たお!!?」
「帰れ変態」
身を乗り出し、変態が摘んでいるリンクパールを引ったくると床に叩きつけてバリンと割った。
金髪碧眼はダンから目を逸らさない。
「あんなに楽しく一緒に遊んでたのに。……黄泉の世界ってあんな綺麗なの……?」
ごごごと地鳴りが聞こえてきそうな低い声でぶつぶつと呻く。
「俺様、じぇらすぃーとは仲良くできにゃいの!!」
吠えると、懐に手を差し込む。
今度は何やらパールサックごと掴んで引っ張り出す。
そして、魔法の真珠に向けた言葉を口に出し、高らかに言った。
「ーーきっひっひ、みんなの大好きな! かくれんぼの時間だクポ~ッ」
最高に怪訝な顔でダンが見つめる。
「俺様の指に止まった奴だけセーフ! あとはバイバイ! GO☆シュート」
パールサックごと床に叩き付けてバリンとシェルを粉砕する。
唖然としているダンに、彼はウィンクして笑った。
「きひっ! ダンを困らせたいだ・け♪」
ビシッと指を突き付けて高らかに宣言する。
「協力の見返りは改めて請求しにくるぞぃ!バイにゃん!!!」
言い放ち、走り去る。
ドアを跳ね除けて夜明け前の街に駆け出していく変態魔道士。
途端に外がざわめき、慌てふためくいくつもの足音と、『総帥!』という悲鳴が聞こえた。
――――
それから、何が起こったかと言うと。
突然、強制的に解散させられたサイコパス集団は、血眼になってあの変態を探す。
ローディのことだ、簡単に見つけられるわけがない。
やがて苦戦した者たちは、ふと、ある可能性にたどり着くのだ。
『Dのところに現れるのでは?』――と。
それからは、変態の筋書き通りだ。
“総帥”を探し求める奴らが、入れ代わり立ち代わりダンのもとに出現するようになった。
部屋に帰る度に、寝て覚める度に、瞬きする度に、知らない奴がいる。
部屋を変えてみたが、無意味だった。
ある時は部屋中ギッチギチに見知らぬタルタル族が詰まっていた。
ポストに妙なメッセージも届いた。
『あの時は本当にすみませんでした。どうにか助けてもらえませんか?』
誰だ。
――いや、もしかしてアイツか?
知るか。 失せろ。
また、何だかよく分からない装備品が部屋に置かれるようにもなった。
オリジナルの、有り得ないほどハチャメチャに性能のいい、常軌を逸したやつが。
『どうだ』と、己の技術と才能を主張するかのように。
今回ローディに選出採用された装備品の製作者たちかもしれない。
最高に気持ち悪いので、使おうとは到底思わない。
今回の件で協力を得た競売場にぶち込んでやった。
『利益はすべてやる』と言い捨てて。
死ぬほど儲かれ馬鹿野郎。
……で、今日も地獄は継続中。
部屋を変える手続きはしてきた。
扉の開閉の度に部屋替えをする、この非合理的なルーティン。
ストレスで、塞いだ腹の風穴が開きそうだ。
不意に――
どこかで背負ったものがちらりと顔を出す。
だがすぐに振り切り、前を向いた。
冒険者の部屋が並ぶ通路を、奥へ奥へと突き進む。
苛立ちを燃料に足音を響かせながら。
来てみると、今回はあいつの部屋のすぐ近くだった。
部屋の前に立つ。
しかし――もう、なんだか、分かる。
扉を開けてはいけないと、本能が警告していた。
少し眩暈がして、目元に手を当てる。
するとその時――はたと、気が付いた。
あいつ――トミーだ。
通路の先から、ふらりと現れる。
トミーはダンの姿を目にすると、すでに涙の溜まっていた目元に手を当ててうつむいた。
肩を震わせ、とぼとぼとこちらに歩いてくる。
――いや、迷子か。
絵に書いたような迷子的ビジュアルを目の当たりにし、ダンは半眼になる。
ずんと、肩に重く疲労感がのしかかった。
トミーは何も言わない。
歩いてきたが、傍までは来なかった。
途中で立ち止まり、ただただ、泣いている。
「…………迷……っては、いねぇよな?」
一応、聞いてみた。
結んだ髪を揺らし、トミーは首を振る。
ダンは小さく溜め息をついた。
――が、次の瞬間、息を止める。
すんすん泣くばかりで、トミーは何も言わない。
ダンは彼女を真っ直ぐ見つめる。
その目には、頭の中で多くの事を一気に処理する慌ただしさが滲む。
自分を落ち着けようとするような呼吸をひとつ落とす。
腕組みをする。
確認するように言った。
「…………やっっと、分かったのか?」
拭いても拭いても涙が出てくるトミー。
ほんのわずかな間を置き、
こくりと小さく頷く。
ダンはその返答を見届け、沈黙。
ふと、遠くに視線を馳せる。
通りの方からは町の賑わい、冒険者たちが交わす会話、行き交う人々の気配。
ダンはおもむろに、ポーチの中に手を入れた。
淡い黄色のリンクパールをつまみ出すと、掌の上で転がし、少し弄ぶ。
ふとした拍子に、手を滑らせてぽろりと落とした。
カツンッと乾いた音がして、魔法の真珠が通路の隅に転がる。
それは連日ダンを容赦なく呼び出す、冒険者仲間のリンクシェル。
相変わらず、トミーは子どものようにすんすん泣いている。
ダンも無言で、少し考えるように首の後ろを摩った。
気を抜けば今にも崩れ落ちそうな自分の身体を、必死に踏みとどまらせる。
そしてダンは、ちょいちょいと手招きして彼女のことを呼んだ。
ぐっと何かを堪えるように、トミーが口を引き結んで固まる。
もう一度、ダンが手招きする。
今度は、トミーの足が、おずおずと踏み出される。
とぼとぼと歩いていく。
ゆっくりと、一歩ずつ。
彼のもとに。
あとがき
最終回『光の方へ』でした。ノルヴェルトが辿り着いた答え。
トミーが選んだ未来。
ここまで見届けてくださった皆さま、本当にありがとうございます。
物語は、もう少しだけ続きます。
次回は二週間後、エピローグを公開予定です。
この結末の余韻を、少しだけ味わっていただけたら嬉しいです。
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