彼が殺意を抱くとき

第二章 第四話
2004/09/02公開



悲鳴が聞こえてノルヴェルトは薄っすらと目を開いた。
内容はよく覚えていないが、夢を見ていたような気がする。
果たしてどんな夢を見ていたのだろうか……と少し考えてから、悲鳴が聞こえたことを思い出す。
敵襲か!?――――――――ノルヴェルトは毛布を跳ね除けて身を起こした。

辺りが騒然となっていた。
しかし周りにいる難民達の様子を見ると、敵が襲ってきたわけではなさそうだ。
皆逃げ出す様子はなく、ただ同じ方向を緊張した面持ちで見つめている。
難民達の視線が集中しているところには人だかりができていた。
見ると、マキューシオと軽装備のヒュームの女性が丁度その人だかりに入っていくところだった。
どうやら彼らも何が起きたか分かっていないようである。
ノルヴェルトは眉をひそめると、すぐさま立ち上がって人だかりへと駆け出した。
まだ朝日が顔を出したばかりの早朝だった。
横から眩しく照らす朝日の中、難民達は人だかりの中心を恐々と眺めている。
ノルヴェルトは人の間に割って入り、皆が見つめている人だかりの中心に視線を落とした。
するとそこには――――――……


ノルヴェルトがそこを見た瞬間、ガルカのドルススがその場に大きな布を被せた。

しかし一瞬、布が何を隠したのかノルヴェルトには見えていた。
何人かの人……エルヴァーンが倒れていたのだ。

「………なんて事を……」
立ち尽くしたマキューシオが布に隠された人々を見下ろして呟いた。
「昨日保護した一家だな、希望を見失ったか」
マキューシオの隣りで、屈んだままドルススが悔しそうに呻いた。
そうだ、彼は死亡していた一家を布で覆って見えなくしたのである。
若い母親とその子ども、それと老婆の三人だった。
ノルヴェルトには一瞬だったのではっきり分からなかったが、布の下では胸を刃物で刺された幼女と老婆、そして手首を切って真っ白になった母親が死んでいるのだ。
「これは…恐らく夜中に………」
ブロンドの髪をポニーテールに結んだヒュームの女性が、視線を落としながら呟く。
「まったく、血の臭いを嗅ぎ付けて獣人が来たらどうするんだ。迷惑な」
「おい」
またしても無神経なことを口走るタルタルの魔道士を、ドルススが静かに叱る。
周りに集まった民達の間から、嘆きと嗚咽が聞こえ始めていた。
寝起きの子どもの手を引いてそそくさと去っていく女達、泣きながら神に祈りを捧げる年寄り。

布で隠された場所を凝視したまま、ノルヴェルトは立ち尽くしていた。
あの布の下にあるものを頭が勝手に想像し始め、徐々に動悸が激しくなっていく。
―――――とそこで、ノルヴェルトの存在に気がついたヒュームの女性が慌てて少年の元にやって来た。

「ノルヴェルト…!」
始めはあからさまに焦った表情をしていた彼女が、そう言うと同時に取り繕った顔になった。
「おはよう。今日は早いわね、眠れなかったの?」
ノルヴェルトからあの場所が見えないように立つ彼女。
しかしノルヴェルトの焦点は相変わらず布に釘付けだった。
「ん、あ、これは………大丈夫よ、あなたが心配することないわ。
 それより皆の朝食の準備をしなくちゃね。ついて来て、準備してあげるから…」
「いい」
エルヴァーンの少年をこの場から離れさせようとする女性の言葉を、すっぱりと拒否する。
女性が少し困った顔をして戸惑っていると、ノルヴェルトは歩き出した。
ドルススや口の悪いタルタルと何やら話しているマキューシオの元に。

「今日の移動はやめにしよう。彼女達を弔って、皆の心を落ち着かせなければ…」
「マキューシオ」
話をしているマキューシオの後ろに立って呼びかけると、マキューシオがゆっくりと振り返った。
マキューシオよりも先に、ガルカとタルタルの二人がノルヴェルトに挨拶をする。
「ノルヴェルト、よく眠れたか?」
「なんかお前また大きくなってないか?」
事も無げに少年に声をかける二人。
マキューシオは、この場に少年がいるということを重く受け止めている顔をした。
「……おはよう、どうしたんだ?」
マキューシオはノルヴェルトの後を追ってきた女性をちらりと見てから尋ねた。
ドルススの問い掛けに頷いて答えると、ノルヴェルトはマキューシオに言う。
「稽古、してほしいんだ」
何処を見ているのか分からない虚ろな目。
ドルススとタルタルは顔を見合わせ、マキューシオは小首を傾げた。
「稽古?……これからすぐにか?」
ノルヴェルトは黙ったまま頷く。
眉を寄せてノルヴェルトの様子を覗うと、マキューシオは後ろの二人を振り返った。
後ろの二人は肩をすくめる。
ノルヴェルトの後ろで心配そうに立っているヒュームの女性も困惑の表情を浮かべていた。

「……分かった」
しばし考えてからマキューシオは答えた。
「でもすぐにはできない。ちょっと待っててくれるか」
ノルヴェルトが頷くと、マキューシオは少し残念そうに微笑を浮かべた。
「すまない。……スティユ」
ヒュームの女性に声をかけ、ドルススとタルタルの二人にも何やら指示を出し始める。
騒然としている中冷静な彼らはマキューシオの指示を聞き、各自散っていく。
スティユと呼ばれたヒュームの女性は、ノルヴェルトを心配そうに見やってから去っていった。
その忙しそうな様子を眺めて、ノルヴェルトは静かにその場を後にする。
思い立ってフィルナードを探し歩くが、漆黒のエルヴァーンの姿はなかなか見つからなかった。
何処へ行っても悲しみに浸る民、不安に震える民。
歩き疲れたノルヴェルトは、先程まで自分が眠っていた場所に戻り毛布に包まる。


結局、マキューシオは夕方まで手が空かなかった。



そして夜がやってくる。
マキューシオ達は日中に自害した一家の墓を造った。
立派なものは造ってやれなかったが、石で造ったその墓に難民達が次々に祈りを捧げた。
墓を建てた後、不安と恐怖に狼狽する民の話を聞いて回った戦士達。
日が沈んだ今やっと彼らに休息の時が来る。
一つの焚き木の元にマキューシオを中心とするここの代表的な五名の戦士が集まった。
五名が集まることは極マレなことで、折角だとノルヴェルトもそこの夕食に招かれた。
ノルヴェルトがマキューシオの隣りに座ると、スティユがパンと水と少しの肉を渡した。
ノルヴェルトはぽつりと礼を言って、マキューシオの向こう側に戻る彼女を見送る。

「今日は悪かったな、結局こんな時間になってしまった」
「え、いや……いいよ、仕方ないよ」
申し訳なさそうに言うマキューシオに、ノルヴェルトは少し寂しげな表情で答えた。
心ここにあらずな感じでパンをかじって、ふと辺りを見回す。
「……フィルナードは?」
「ああ、フィルナードなら妹さん親子と一緒にいたぞ」
スティユの隣りで小さな肉を口に放り込みながらドルススが答えた。
暗い中焚火の揺らめきに照らされた彼は、より一層体が大きく見える。
続けてドルススは思い出したように言った。
「そうだ。フィルナードがな、今日の稽古は無しだと言っていた」
「無し?」
その言葉を聞いて少々驚きの表情を浮かべると、ノルヴェルトは口を結んだ。
がっかりした様子の少年を見て、その場にいる面々は何となく視線を交差させる。
特別口にはしなかったが、何となく、皆が感じていることがあった。
皆の無言の意見を汲んで、マキューシオが口を開く。
「それなら、今夜は私が稽古をつけてやろうか?昼間は立て込んでいてできなかったしな」
「!……いいの?」
手元に視線を落としてパンをいじっていた少年が目を見張って顔を上げた。
「ああ、勿論だよ」
その反応を予想していたかのように、優しくにこと笑うマキューシオ。
ただ、喜びの表情を浮かべるかと思いきや、ノルヴェルトの表情は冴えなかった。
礼だけを言って再び視線を落とすノルヴェルト。
張り切って食事を急ぐ訳でもなく、こくりと水を飲んで再び押し黙る。
焚火のパチパチ弾ける小さな音。

「前から言おうと思ってたんだが、お前、暗いぞ!」
―――と、唐突に正面に座っていたタルタルが指差してくる。
突然のことに驚いて顔を上げると、彼の両隣りに座っているドルススとミスラの戦士が同時にタルタルの頭を小突いた。
「ワジジはいつもものをはっきり言い過ぎだってーのー」
ミスラが意地悪な口調でタルタルに言う。
ワジジと言うそのタルタルは、自分のどこが無神経なのか理解しかねると言いた気に首を捻った。
ローブ姿のワジジは、ここの魔道士達をまとめている男だ。
正義感が強く、すぐに興奮して前線に突撃することから『前衛魔道士』と言われている。
その隣りで胡座をかいてパンをかじっている白髪のミスラ、セトは、『でもまぁ、暗いのは確かやねー』などと言った。
ノルヴェルトがムッとした表情をすると、セトはニッと意地悪く笑ってみせる。
それを見てドルススがやれやれと肩をすくめ、スティユが小さく笑った。

ここでは戦士達が前衛部隊と後衛部隊、そして護衛部隊の三つに分かれている。
戦士達の半分が、マキューシオ、ドルスス、スティユの所属する前衛部隊。
ワジジがまとめる後衛部隊は全体の三割ほどで、前衛部隊のサポートをしている。
そして残りの二割は護衛部隊として、他の二部隊が戦闘に向かった時に民の護衛をするのだ。
護衛部隊はセトが取り仕切っており、フィルナードも所属している。
一応全体の指揮はマキューシオが執っているが、だからと言って彼が特別偉いわけではない。
ここに組織名はなく、地位も階級もない。
そう、ここでは皆が平等に“生きて”いた。

ノルヴェルトがここに来てから、この五人は特によく面倒をみてくれた。
食事も誘ってくれるし、たくさん話をしてくれた。
セトは弓矢での狩りの仕方を教えてくれるし、ドルススは何度も釣りに連れていってくれた。
スティユはクリスタルを使っての魔法のような合成術を見せてくれるし、身の回りの世話をしてくれる。
皆一人ぼっちのノルヴェルトにたくさんのことを教えてくれた。
数ヶ月を共に過ごしてきたノルヴェルトは、彼らのことを段々と理解してきている。
まだ分からないことはたくさんあるけれど。

「お前はなぜそんなに暗いんだ?フィルナードの暗さが移ったんじゃないか?」
まだ言うワジジ。
「フィルナードは暗いとはちょい違うんじゃん?渋いんよ」
「ほぅ、あれは渋いと言うのか。ノルヴェルトはあの渋さを目指しているのか?」
むむむと眉間にしわを寄せて顎に手を当てるワジジ。何とも解せないという表情の彼に、セトは笑って手をヒラヒラさせた。
笑い飛ばして、胡坐をかいた膝の上に頬杖をつく。
「フィルナードかぁ~……うちはフィルナードじゃなくてマキューシオ派だけどね~」
個性的な口調でケタケタと笑いながら話すセトはとても楽しそうだ。
一体何の話をしているんだとドルススも呆れ顔で笑っている。
そんな彼らを眺めて、マキューシオも穏やかな笑みを浮かべていた。
自分そっちのけでポンポン会話を続けるその場に押し黙っていると、すかさずワジジがノルヴェルトに言った。
「なぜいつもぼーっとしているんだ?表情が乏しいんだ、あまり笑わないし」
パンを頬張ったまましゃべるワジジは割りとしつこい性格だ。
頭が柔らかい方ではないので、疑問に思うとどんどん聞いてくる。
マキューシオの隣りで苦笑していたスティユが『ワジジ』と軽く諌めてから、ノルヴェルトに向き直る。
「でも、独りで何か考え込むのは良くないわ。不安なことがあったら言ってね?
 構えたりしないで、自然なあなたでいてほしいわ」
先程から黙っているノルヴェルトに彼女の優しい言葉が届く。
ノルヴェルトはすぐに彼女から視線を反らして俯いてしまう。
「なんだよもぉ、顔の筋肉鈍っちゃってんじゃん?」
そう言ってセトは立ち上がるとノルヴェルトにずんずん歩み寄り、少年の両頬を引っ張ろうと手を伸ばした。
驚いたノルヴェルトは思い切り拒絶し、顔をそむける。
「あ、こいつ!なーんでそんな浮かない顔してんだよー」
「セトったら、やめなさい」
スティユに叱られたセトは『ちぇ~』と口を尖らせて元いた場所に戻った。
ぶつぶつ言いながら残りのパンを口に押し込む。
ノルヴェルトは黙ったまま座り直して、もそもそと食事を再開する。
このメンバーにはもう大分慣れてきているはずなのに、昨日今日とノルヴェルトの様子がおかしい。
この場にいる皆がそう感じていた。
そして、どうしたのだと尋ねたとしても少年は何も答えないということも分かっている。
マキューシオは、塞ぎ込んだように黙っているノルヴェルトの肩に優しく手を置いた。
顔を見ることはせず、ただぽんぽんと二度置いただけ。
ノルヴェルトはぴたりと動きを止めて、そっと横目でマキューシオを見た。
黒髪のヒュームはいつもの穏やかな表情で、談笑する仲間達を愛しそうに眺めていた。


ノルヴェルトの心で、とても、とても恐ろしくて悲しいものが激しく渦巻いた。


そして結局、賑やかな食事の時間、ノルヴェルトは最後まで塞ぎ込んだままだった。

食後、メンバー達はそれぞれの役割を果たすために散っていった。
今は難民達の群れから少し離れたところに、マキューシオとノルヴェルト、それからドルススがいる。
夜にマキューシオと稽古をするのは今日が初めてである。
いつも闇夜を背負って立っているエルヴァーンとはまた雰囲気が違うが、対峙しているのがマキューシオであっても、ひやりとした緊張の空気は同じだった。
先程の食事の時のような、暖かな眼差しはない。
じっと、見つめられる。
立ち退けと、我は引かないという眼差しで。

マキューシオは細身の剣で相変わらず無駄のない剣さばきだ。
いつもは彼の剣に必死に反応して防御に徹するノルヴェルトだが、今日は少し違う。
攻撃に出たくて仕方がないというような、無用心な動きが多い。
少し離れたところに立って見守っているドルススは、腕組みをして首を傾げていた。

ノルヴェルトは小振りの剣を振るいながら、胸中吐き捨てるように毒づいていた。
―――――考えるな……考えるなったら!!
昨日の晩からずっと苦しんでいるノルヴェルトは、言う事を聞かない思考に苛立ちを募らせていた。
考えたくもないことを、頭が勝手に働いてどんどん先へ進もうとする。
やめろと叫ぶのに、思考は止まる事なく突き進むのだ。
気がついてしまった。
昨晩のマキューシオの何気ない一言で、改めて気付いてしまったのだ。
その瞬間から少年はずっと悲しみと恐怖に震えていた。

言うことを聞かない己の思考を振り切るかのように、乱暴に剣を振るった。



僕ハ難民達ト残サレテ、ミンナ戦場ニ向カッテイク。

遠クカラ聞コエル戦イノ声。
――――やめろ……。
ミンナハ次々ト紅イ大地ニ倒レテ、動カナクナル。

難民ニ混ジッテ、僕ハジット待ッテルンダ、ミンナノ帰リヲ。
―――――やめろってば!
誰モ帰ッテコナイ。
―――――………嫌だ……。
気ガツクト周リノ民モ動カナクナッテイテ、ミンナミンナ死ンデイテ。

ソコニハ僕一人ダケガ立ッテルンダ。

ミンナガ向カッタ先ヲ見ツメテ、雨ガ降ッテモ、ズット待ッテルンダ。

誰モ帰ッテコナイ。

誰モ帰ッテコナイヨ?
―――――嘘だ!みんなは絶対死んだりしない!!


本当ニソウ思ウ?


無茶な打ち込みをしたノルヴェルトの剣を、マキューシオの剣が撃ち落した。
そしてマキューシオは少年の剣の先を踏み付けて地面に食い込ませる。
剣を封じられて動きが止まったエルヴァーンの少年を見下ろして、マキューシオは剣を下ろした。
「ノルヴェルト、そんな軽率な剣では……」
呆れとも困惑とも言えない複雑な声で、彼は言い掛けると言葉を切った。
うつむいている少年の搾り出したような声が聞こえたからだ。

「………この世界に…『絶対』なんてないよ…」

その声は小さく、少し離れたところにいたドルススは眉を寄せて数歩近付いた。
「…ノルヴェルト?」
マキューシオが少年の様子を覗いながら呼び掛けるが、少年は首を垂れて顔を伏せたまま、地面に突き刺さった剣を無言で引き抜こうとする。
マキューシオがそっと剣の上から足を退けると、剣はずるりと抜けた。
引っ張る勢いでノルヴェルトはフラフラと後退する。
うつむいたまま力なく剣を引きずる少年は泣いていた。
「………マキューシオ………僕、怖いんだ…」

彼らと出会ってから、ノルヴェルトは何度も喜びを感じることがあった。
時には戦争中だということを忘れてしまうくらいに、楽しいと感じた時もある。
しかし、嬉しいと思うと同時に、楽しいと感じると同時に、深い悲しみに満たされるのだ。
いつかはこれを失う時がくる。
みんなを慕えば慕うほど、恐怖は膨れ上がり自分を支配する。
感じる喜びがすべて悲しみへと繋がって、怖くてたまらなくなる。

「………とっても…怖いんだ…っ………みんなが、死…っ」
不安に押し潰されそうになっている少年は、必死に手の甲で涙を拭いた。
「みんなが生きて…、…平和な…世界…。
 平和な世界でみんなで笑って……無理だよ、…そんなのっ…できっこないじゃないかぁ…!!」
ノルヴェルトは剣を地面に叩きつけ、マキューシオにその言葉をぶつける。
そして張り詰めていたものが弾けたように、声を噛み殺して泣き出した。

マキューシオは剣を放り出して少年を抱き締めた。
胸元に少年の頭を押し当てて、強く、強く抱き締める。
そして『ノルヴェルト』と優しく少年の名前を呼んで、少年の頭を撫でた。
「先のことは私達が考える。だから君は、今を一生懸命生きればいいんだよ?」
悲しいことや恐ろしいことを覚悟するのは私達だけでいい。
君は怖がることはない。
切ない表情で少年を見下ろすマキューシオは、『私達は何処へも行かない』と呟く。
「まったく、お前は賢い奴だよ」
泣いている少年を暖かな眼差しで見つめて、ドルススはそう言いながら笑った。
ノルヴェルトは、まるで幼い子どものようにしばらく泣き続けた。
そんなエルヴァーンの少年を抱き締めて、マキューシオは子どもをあやすようにノルヴェルトの背中を叩いた。




その日の夜更け、皆が寝静まった頃。
ドルススと二人で話をしていたマキューシオはこんなことを言った。

「十五にも満たない子どもでさえあれほど傷付けている…」



「ドルスス、私はあの時…………戦争を殺してやりたいと思ったよ」



<To be continued>

あとがき

これで第二章メインキャラ、二軍が出揃いました。
セト、ワジジ、ドルスス。本当にありがとう。